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会計をしスーパーを出てちょっと頭が冷えた頃、家の洗剤が切れていることを思い出しちょうど目の前にあった薬局に入った。 いつも使っている洗剤を手に取ってレジに並ぶと、メイク用品のコーナーから「ねえ、このリップどうかな、可愛いと思う?」「さあ……」という男女の会話が聞こえ、彼氏が買い物に付き合わされてんのかなと何気なく声のほうを見るといたのは二宮さんと木月だった。 え、と衝撃でふたりをガン見してしまう。 「さあ、じゃないよ。もっと真剣に考えてよ、孝宏」 「だって興味無いし」 興味無い、と言いながら木月はつまらなさそうな表情はしていなかった。 ってか二宮さんって木月のこと苗字で呼んでなかったっけ…? 「……様?お客様?」 「おい、兄ちゃん、呼ばれてるぞ!」 ぼうっとしているといつの間にかレジが自分の番になっていた。 すみません、と後ろに並んでいたおじさんに謝り店員に洗剤を渡してもう一度木月たちのほうを見ると、おじさんの声が響いたからか最悪なことに木月もこっちを見てばっちりと目が合ってしまった。 「お会計二百八十六円になります」 俺は慌てて目を逸らし会計を済ませると洗剤を袋にも入れないで早足で薬局を出た。 木月にもし今話しかけられたりしたら色々なことが爆発して本当に泣きそうで怖かった。 そこからはもうどこにも寄らずまっすぐに家に帰った。

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