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【12】
家に着くのと同時に「ごめん、今日バイトで遅くなる。夕飯先適当に食ってて」と兄貴からメールが届いた。わかった、と短く返信しとりあえず冷蔵庫の中を確認した。
キャベツが少し残ってるから油揚げいれて味噌汁にして、おかずは適当に豚肉炒めでもいいな……。
これ以上買い物には出たくなくて必死にあるものだけで夕飯を考えた。
味噌汁の湯を沸かしながらここ数日のことを兄貴に相談してみようかとふと思った。というか俺は兄貴以外にカミングアウトしていないし、相談するなら兄貴しかいない。
が、すぐにそれはやめようと思い直した。
木月に好きな人がいると言われてショックだったと話してもそれで何か変わるわけじゃないし、木月に好きな人がいなくなるわけでもない。
タクヤに言われたこともショックだったが、話せば兄貴も傷つけることになる。
兄貴は今じゃ明るくて友達も多く悩みなんてなさそうなリア充大学生だけど、実際は俺よりも周りの目を気にしマイナスな意見に敏感に反応する。
それは、兄貴がまだ高校生だった頃一番の親友だった人に告白していじめられた経験からきていることだった。
当時、兄貴は何の前触れもなく部屋に閉じこもって学校に行かなくなってしまった。食事も最低限しか取らず何より母さんにも俺にも理由を一切話さなかった。
母さんが毎日何とかして理由だけでも話してもらおうとしていたが兄貴は申し訳なさそうな顔をするだけだった。
ある日母さんが「……陽、病院行こうか」と兄貴に行った。
兄貴の精神面を心配しての提案で、実際俺もそうしたほうがいいんじゃないかと思っていた。
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