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【13】
が、その一言で兄貴は酷く傷ついた顔をしてぼろぼろ泣き始めた。
兄貴が泣くなんて小さい頃以外はなかったから俺も母さんもかなり動揺したのを今でも覚えている。
「ごめん、心配をかけてるのはわかってる。でも……病気じゃない。病気じゃないから…………」
絞り出すような声で病気じゃない、と繰り返す兄貴にもう母さんも病院に…とは言わなかった。
そして兄貴が少し落ち着いた頃、母さんは空気を変えるように兄貴と俺の好きなデザートでも買ってくると言って出掛けて行った。
俺も部屋に行ったほうがいいかな、と立ち上がりかけた時、兄貴は今まで一度も話さなかった学校に行かなくなった理由をぽつりぽつりと俺に話し始めた。
同性の親友を好きになったこと、告白して振られたこと、それをクラスで言いふらされたこと、持ち物を「おカマ菌がついている」と捨てられたこと、グループ行動では避けられ誰にも組んでもらえないこと、それが半年以上続いたこと……。
「……数回ならともかくさすがに何ヶ月も続くと辛くなってさ」
兄貴は苦笑した。
いじめなんじゃ、とは俺も母さんも薄々思っていたが、そんな理由とは思いもしなかった。
確かあの時、俺も兄貴にゲイだってこと話したんだよな……。
当時のことを鮮明に思い出す。
結局兄貴が再び学校に行けるようになったのは進級してクラス替えが行われてからだったが、お互いカミングアウトしてから兄貴は精神的に落ち着いてきて異常に引きこもったりはしなくなった。
本当良かったよなと思うのと同時に余計にタクヤとのことを話さないほうがいいとも思った。
兄貴に話せば無駄にトラウマを思い出させてしまう。
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