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【14】
結局兄貴が帰ってきても母さんが帰ってきても何も話せないまま時間だけが過ぎていった。
***
次の日、教室に行くと真っ先にタクヤと目が合い気まずく感じながらもおはよ、と言うとふいっとわかりやすく無視された。
タクヤの態度を見て、なんで無視するんだというのも言う気力すら湧いてこずその程度のトモダチだったんだと自分に言い聞かせた。
いつも通り授業を受け友達と弁当を食べる。
ただ木月の姿は視界にいれないように意識した。気を抜くとじっと見てしまいそうで怖かった。
放課後になりさっさと帰ろうと支度をしていると担任に教材運びの手伝いを頼まれた。
ダンボール四箱分の教材を職員室に持って行って欲しいと言われまず二箱を職員室に持って行った。
…………重い…………。
最初は軽かったのに残りの二箱は分厚い参考書が入っていてかなり重かった。
一箱ずつにすれば良かったと思ったがわざわざ引き返すのも面倒くさいしここに置いておくわけにもいかない。
「一ノ瀬?何してんの?」
どうしたもんかと考えていると声をかけてきたのは一番避けたかった木月だった。
「……先生に荷物運び頼まれて」
無視するわけにもいかず答えると「手伝うよ。どこに運べばいいんだ?」と言いながら木月は一箱持ってくれた。
迷ったが、正直手伝ってもらえるのは助かるから礼を言ってそのままふたりでダンボールを持ちながら職員室まで歩いた。
「……一ノ瀬、昨日薬局にいたよな?」
「…………いたけど。木月は俺の見間違いじゃなきゃ二宮さんと買い物してたよな」
「ああ。そのことなんだけどーーー」
そのことなんだけど、何?実は付き合ってるとか?それとも前言ってた好きな人は二宮さんで、まだ片想いの状態だから変に付き合ってるとか誰かに話さないでくれっていう口止め?
ぐるぐる考えているうちに職員室に着いた。俺は木月の次の言葉を聞くのが怖くて、木月が話そうとしているのを遮るように「失礼しまーす」とどんどん職員室に入って行った。
木月も俺が職員室に入ったのを見て話を一旦やめた。
「お、一ノ瀬ご苦労だったな。木月も手伝ってくれたのか、ありがとうな」
適当に担任と話をし、俺と木月は職員室を出た。
「一ノ瀬、良かったらこの後一緒に帰らないか?」
方向同じだし、という木月の提案にごめん、と返した。
「……俺この後用事あってさ。もうゆっくり帰ってる時間ないんだ」
これ以上自分にとって聞きたくない話をされるのが怖くて、俺は手伝ってくれてありがととだけ素っ気なく言うと木月が何か言う前に下駄箱に向かった。
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