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これから塾があるという二宮さんは最後に「もし孝宏と喧嘩でもしたらいつでも私に愚痴りにきていいからね」と言い残して取りに来たノートを持って教室を出て行った。 「……木月、俺とメアド交換した時嬉しかったの?」 メアド交換した時の喜びも、料理を教えに行った時に変に意識して緊張してたのも自分だけだと思ってたのに。 顔を背けたまま「…………嬉しかったよ」とぼそっと言ういつもとは違う木月を見てそうじゃなかったんだと知る。 俺は木月の右手を自分の左手で軽く握った。 「…………俺も嬉しかった。木月とメアド交換出来た時も、料理教えてって頼まれた時も。お前の家に行く時は緊張したし、その後に食べたアイスは一緒に食べれたから美味しかったんだ。…………だから、その……」 自分も同じだということを伝えたいだけなのに上手く言葉がまとまらない自分が嫌になった。 えーっと…と悩んでいると握っていた手を離されかわりにぎゅっと抱きしめられた。 「………っ…………!?」 突然のことに頭が真っ白になっている俺に木月がいつもの落ち着いた声で「今、メアド交換出来た時より何倍も嬉しいよ」と言った。 そしてすっと腕を離すと今度は俺の顔を正面からまっすぐ見てきた。 その表情は真剣そのものだった。 「ちゃんと言ってなかったから改めて言う。…………俺と、付き合ってください」 うんというべきか、はいというべきか迷って結局声が掠れて上手く返事が出来ず必死に頷いた。今度は俺のほうが顔を見られたくなくて俯いた。 抱きしめられた体も、顔も、目も全部熱かった。

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