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第154話

 話して、と優が促せば、周は戸惑ったように視線を彷徨わせる。 「雪也が、飲んでた」 「ひと包みを? いつ?」  優の問いかけに、フルフルと首を横に振る。 「ふたつ、飲んでた。夜の、俺と由弦が眠った後で」 「飲んで、どうなったの? 周は何を気にしてるのか、教えてほしいな」  飲んだだけなら、周はきっとこれほどまで気にしない。その予想通り、周は優の問いに答えた。 「飲んで、どこかに行った。少しして戻ってきて、眠ったみたいだったけど。……朝に、雪也が起きてこなかった。いつもは朝ご飯作り始めるくらいに起きてくるのに、今日は由弦が揺さぶって、サクラが顔中舐めてても起きなかった。起きても、眠そうでフラフラしてた」  ただの偶然? 少し疲れていただけ? その可能性も大いにあり得るだろう。むしろそうであってほしいと、周は無意識のうちに縋るような眼差しを優に向けていた。その視線に、優は優しく微笑む。 「そう、なら大丈夫だろう。これはただの睡眠薬だ。あまり強くないし、僕が教えたものでもあるから身体に害はない。多分今朝は薬がまだ効いていたから寝過ごしたんだろうね」  大丈夫だよ、と断言した優に周は目を見開く。ついでホッと息をついた。 「……よかった」  心の底から零されたのであろうその呟きに、優は笑顔を崩すことは無い。安堵した周が勢いよく茶を飲み、黙って出てきたからと立ち上がった。優も立ち上がり、門まで案内する。

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