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第163話
「だよなー、お前がなーんにもしないわけないよなー。知ってたよ」
恋人である優の目の前でさえ雪也を愛でまくっている弥生が何もしないなどあり得ない。いつもであれば呆れて遠い目をする紫呉であるが、今回は腹を立てていることもあって乗り気だ。優も口こそ挟まないもののニコニコと、それはそれは楽しそうに微笑んでいる。
「で? 俺は何をしたら良いんだ?」
「情報収集だな」
端的に答えた弥生に、情報収集? と紫呉は首を傾げる。
「そういうのは俺じゃなくて優の方が得意だろ? 俺で良いのかよ?」
欲しい情報が手に入らないって言われても困るぞ、と紫呉は最初に釘を刺すが、弥生は問題ないとばかりに脇息にもたれかかった。
「警部所の上の方ならば私が適任だろうが、役人たちならば紫呉の方が仲が良いだろう? 私や優が行くと向こうも無意識に身構えてしまうだろうが、紫呉ならば仲間内の雑談という形で情報を得られるだろう。雪也達の安全のためにも表立って堂々と動くのは得策ではない。そこでだ、紫呉は雑談という形で例の茶屋で暴れた男のことを聞き出してくれ」
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