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第182話

「構わないけど、振り回したりしたら駄目だよ。あと、真剣は重いから、鞘から抜きたいなら紫呉さまに抜いてもらってね」  それだけを注意して、雪也は今度こそカゴを持ち庵の扉へ向かった。その背中を見つめ、周が無言で追いかけてくる。雪也の手が扉に触れようとした時、周は雪也の袖を掴んだ。 「ん? どうした?」  いつもなら追いかけてこない周の行動に雪也は首を傾げる。周はキョロキョロと視線を彷徨わせて口をつぐんでいたが、首が落ちてしまうのではないかというほど俯くとポツリと呟いた。クシャリと、袖を掴む周の力が強まる。 「…………怒ってる?」  あれやこれやと話声が聞こえる空間に、ポツリと落とされたその言葉。きっと弥生に雪也が食事をあまり食べないと言ったことだろう。周は雪也の為ならば例え弥生を使うことになったとしても躊躇いはしないが、それをすることで雪也に嫌われることをひどく恐れている。今の周のまわりには弥生たちや由弦、蒼に湊、そして町の人たちと沢山の人間がいる。決して独りぼっちではない。確かに、周を最初に助けたのは雪也だけれど、もう周の世界は雪也だけではないというのに、周は雪也に執着し、こうして嫌われ心が離れていくことを異常なほどに恐れている。

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