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第200話
「どう違うんだ?」
なんとなく〝速さ〟を選ぶか選ばないかを聞くのはわかるが、同時に〝強さ〟を選ぶか選ばないかを聞く意味が二人にはよくわからなかった。槍を習うということは強さを習うことだ。選ぶものではないだろう。しかしそんな二人の考えを理解している紫呉は苦笑して、組んでいた腕を解くと二人に向き直った。
「どっちかを選べば、どっちかを〝極める〟ことは諦めないといけねぇからな。わかりやすく言えば、俺も弥生も得物は違うけど、どっちも戦うことはできる。だが体格はまったく違うだろ?」
その問いかけに由弦も湊もコクンと頷く。目の前にいる紫呉は遠目からでもわかるくらい全身に筋肉がついており、ガッシリとした体格だ。それに比べ弥生は身長こそ紫呉と大差はないが、筋肉については着物に隠れてわからない程度である。おそらく着物を脱げば筋肉がついているのだろうが、普段は華奢とまでは言わないがスラリとした細身だ。
「俺は強さを取った。だから筋肉をつけて、一撃の重さを極めたんだ。確実に敵を仕留めるためにな。だが弥生や優は速さを取った。筋肉をあんまりつけないから一撃の重さは比べ物にならないくらい俺の方に軍配が上がるが、逆に筋肉を過剰につけてないからこそ身軽で、俺よりもうんと早い。それぞれに長所も短所もある。それで、お前らはどっちを取るんだ?」
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