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第221話

(おいおいおいおいおいおい)  雪也に欲情などはしないが、それでもこれは見てはいけないような気がしてならない。思わず目を逸らした紫呉の耳に、チャプッと小さな水音が聞こえて、彼が水浴びをしだしたのだということがわかった。 (でも、なんでわざわざ)  このような場所で、このような時間に? 雪也は今日も庵に水を運んで、衝立の向こうで身を綺麗にしていたというのに。 (人目のない場所でのびのびと水浴びしたかったのか?)  だがそれならば、周たちの目を盗んで夜の危ない時間にコソコソと行く必要はないだろう。以前優が言っていた精神安定剤を服用してからというのも気にかかる。  紫呉はどうしようかと悩みに悩んで、できるだけ雪也の裸体を見ないようにしながら視線を向ける。視線の先にいる雪也は肩まで水に浸かっていて、紫呉は思わず安堵の息をついた。  静かに浸かる雪也におかしな所は何もない。本当にただ人目を避けて水浴びしたかっただけで、紫呉や周の取り越し苦労だったのかと視線を外そうとした時、何の動きも見せなかった雪也が突然、何かから身を守るように己を抱きしめながら震え始めた。

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