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第265話

 雪也が薬を煎じ、届けに行くのに日々忙しくしているので、いつの間にか食事の用意は買い出しも含めて周の役目となっていた。時々由弦も一緒に買い出しに行ってくれるが、今日はなかなか雑草がしぶといらしく、さほど量を買う予定もないからと周はいつもの籠を持ちながら一人で歩く。弥生と雪也の人柄のおかげだろう、町の人々は雪也と一緒でなくとも周に良くしてくれ、特に店番をしているおばちゃんなどは美味しい献立を教えてくれることも多かった。特に彼女たちの節約献立は非常に役に立つ。あまり人と関わるのが得意ではない周は反応が乏しかったり、表情がなかったりと色々あるが、それも町の人々はあまり気にしないでくれるのもありがたかった。 (今日は何しようかな)  由弦は何でもよく食べるので苦労などはないが、問題は雪也だ。  雪也は周の作る食事に文句は決して言わないし、好き嫌いがあるようにも見えない。味はどうかと聞けば、必ず「美味しいよ」と微笑んでくれる。だが、食べる量が少ない。その食事量は来る度に弥生たちもチクチクと言っているので、周と出会う前から変わっていないのだろう。それで何も問題がなければ周とて無理に食べろとは思わないが、日に日に痩せていく雪也を見ると、どうしても食べさせなければと思ってしまう。

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