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第363話

「その髪と目が怖い? でも、湊が気にするほど、皆は気にしてないよ。少なくとも、庵の皆は何とも思ってない。由弦なんか、いっつも湊と一緒に大はしゃぎしてるじゃないか。だから、買い物が怖いなら僕も一緒に行くけど、庵にくらいは、僕が行けなくても諦める必要はないんじゃないの?」  金の髪と碧玉の瞳は異端か? もしかしたらそうなのかもしれない。確かに、珍しい色だろう。だが、それだけだ。 「あおい……」 「胸を張りなよ」  先ほど蒼を優しいと言い切った者とは思えぬほどにか細く弱々しい声を、蒼は遮った。自分を否定する言葉なんて、声にする必要もない。 「金は太陽の色だよ。緑は豊かさを表す。輝く太陽に、命の緑は平和の象徴。それを持つ湊は、もっと誇ったら良いのに。少なくとも僕は、湊の髪と瞳はとても綺麗だと思う」  持って生まれたものを卑下する必要などない。この国の人と少し違うからというが、それが何だというのだろう。 「顔を上げて、前を向いて、堂々と歩いたら良いんだよ。それが湊を守ることにもなる」  理不尽のすべてを甘んじて受け入れる必要などない。そんなものに恐れて、縮こまるなんて馬鹿馬鹿しいじゃないか。  湊も、雪也も、もちろん周や由弦も、堂々としていればいい。何も間違ったことなんかしていないのだから。  顔を上げ、堂々としていればいい。それが自分自身を、生き方を、肯定することにつながるから。自信を持って。

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