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第423話

「雪也、薬、どれ? 取ってくるから」  心配で仕方がないという周に申し訳なさを覚えて、大丈夫だからと雪也は頭を撫でる。その優しい温もりは嬉しいけれど、今はそんなことをしている場合ではないと周が眉間に皺を寄せた時、走っているような足音が聞こえ、すぐに勢いよく扉が開かれた。  足音に気づいていた雪也は苦笑し視線を彷徨わせ、周と由弦は肩をビクつかせて振り返った。 「ゆーきーやー?」  黒い笑みを浮かべながら、低い低い声で雪也の名を呼び、ゆっくりと蒼が近づいてくる。そんな彼の後ろには野菜の入った籠を持ちながら苦笑している湊の姿もあった。 「び、ビックリしたぁー。蒼、なにをそんなに怒って――」 「怒るに決まってるでしょ~? ねぇ、雪ちゃん。他はともかくとして、僕まで騙せるなんて、思ってないよね?」  単に無理がたたって倒れたのだと思っている由弦の声を遮るようにして、蒼はズイッと雪也に顔を近づけた。それに周が手を伸ばすが、気づいた湊がやんわりと抑える。触らぬ神になんとやら、だ。

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