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第424話
「これがただの演技なら、納得はしないけどそれもひとつの策かって僕も受け入れたと思うよ? 納得はしないけどね」
二回言った、と胸の内で呟きながら、由弦はサクラを抱きしめてわずかに後退りする。
なんか、蒼こわい。
「でも、この状況を見るに演技じゃないんでしょ? なに、したの?」
わざと自分を傷つけただろう、と確信をもって問いかける蒼に、誤魔化しなど通用しないと知って、雪也は肩を竦める。もともと、背中を押したのは蒼だ。そんな彼に下手な嘘はつくだけ無駄というもの。――できれば、話したくはなかったけれど。
「身体を温める薬を使っただけだよ」
その言葉に、周が目を見開く。しかし雪也は、気づかなかった。
「なんでそんなことしたの? 別に飲まなくたって、わざと倒れるだけでよかったでしょ?」
それでは駄目だ。蒼の言葉に、雪也はゆっくりと首を横に振った。
「それをしたら、触れられた時にわかってしまう。誰の目にも明らかに、疑う余地なんてわずかもないほど〝雪也は体調を崩して倒れた〟と思わせないと。そうしたら、なんの危険もなくすべてを終わらせられる」
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