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第425話
浩二郎を庵から出すだけならば、いくらでもやり方があっただろう。何もこんな回りくどく自らを犠牲にするようなことをせずとも良かった。だが、彼が庵に利用価値を見出してどうにか留まれるよう画策しており、何より尊皇の志士であるならば話は別だ。
この庵は、近臣たる弥生の所有物。雪也たちが衛府と密接に関わることなどないが、まわりもそう認識してくれるとは限らない。そしてこの庵には、戦う術を持たない周とサクラ、そしてまだまだ身を守るまではいかない由弦がいるのだ。彼らを守るためにも、確実に安全であると言い切れる策を用いる必要があった。
そう、雪也が出るように言うのではない。町の人々を味方につけ、彼らから出るように言ってもらう。そうすればいらぬ恨みは買わないし、雪也をあてにして町民が怪我人を庵の前に無理矢理放置していくこともないだろう。
「……その〝なんの危険も無くすべてを終わらせる〟ために、何をしたの?」
確かに雪也は町民から慕われている。弥生という後ろ盾もある。だが、蒼はそう簡単に納得はできない。
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