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第432話

「雪也はただ、守りたかっただけだと思う。自分が守らなきゃって、自分がやらなきゃって、そう思っただけ。誰かに頼ることも、自分を犠牲にしない方法も、取らなかったんじゃない。きっと、取る取らない以前に、知らなかったんだ」  自分で自分を守るしかなかった。みんな自分の事で精一杯で、誰も助けてなんてくれやしない。ともすれば己を守る為に騙し、傷つけてくることもある。  誰も助けてくれないという諦念と、誰も信じられないという恐怖。  雪也は弥生に助けられ、多くの人から愛情をもらい、それを素直に受け取っているように表面上は見えるけど、彼は心の奥深くで諦念と恐怖を抱き続けている。でもそれは、抱き続ける雪也が悪いわけでは、決してなくて。 「知らないものは教えられなきゃわからないし、教えられたとしても、これはある意味で感情と本能の問題だから、そうすぐには変えられない。もしかしたら今まで生きて来た年月の倍以上の時間がかかるかもしれない。それくらい、難しい。だから、雪也ができないわけじゃないんだ」

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