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第434話

「周……」  いつもは淡々としている周の、その恐怖に震える姿に由弦は言葉を失う。  雪也は、この姿を知るのだろうか。手足どころか全身を震わせ恐れる周の姿を。誰よりも、雪也がいなくなることを恐れている、その姿を。 「周、それを、雪也に教えてあげてほしい。どんなに雪也を必要としているのか、どんなに雪也を失うことが恐ろしいのか、どんなに……、どんなに雪也を愛しているのか」  湊にも、他の誰もに明らかなことであっても、きっと雪也には駄目なのだ。確実なもの、目に見えて、耳に聞こえる、明確なものが無ければ信じることができない。それは湊と一緒だから、何となくわかる。 「でも、どんなに想ったって雪也には届かない。どれだけ必死になったって、雪也にとって俺は小さな子供のままだッ! 今回みたいに何一つ言ってくれやしないッ!」  あぁ、なんて恨めしいことだろう。この小さな身体が、非力な手が、時が経てども経てども決して埋まることのない歳の差が、今ほど腹立たしく無力に思ったことは無い。  もっと大きかったら、もっと強かったら、せめて雪也と同い年であったなら、雪也は頼ってくれただろうか? 今回のことだって、周に話してくれただろうか? 独りで背負い込むことなく……。  けれど結局、これは叶うことのない夢想に過ぎない。雪也の中で周は、ずっと子供のまま。守るべき存在のまま。

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