静かで凛とした声音に交じる光を感じて弥生は口元に笑みを浮かべる。しかし次の瞬間、キュッと唇を引き結んで静宮に手をつき、深く深く頭を垂れる。 「しかし縁とは別に、私は越権行為ではありますが宮様にお詫び申し上げなければなりません」 「詫び、とな」 　それも越権行為だと自ら言うとは。 「はい。私は宮様に多くのものを諦めさせ、多くのものを強いました」 　フッ、と思わず笑いが零れ落ちる。 「春風さん、確かにそれは越権行為に他なりません。春風さんが詫びる理由はないですやろ？」 　弥生は名門春風家の嫡子で、徳茂のお気に入りの側近で、静宮の昔馴染みではあるが、逆に言えばそれだけだ。公武合体の為に嫁いできた静宮の何をも、弥生ひとりで決めるほどの力はない。それでも弥生は詫びねばならない。