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第460話
「弥生さんと優さんも帰ってきたんだ!」
「もうずっと江戸に居られるんですか?」
弥生は将軍の信頼厚き春風家の嫡男で、意外とあちこちに赴くため今回ほど長期というのは珍しいが、武衛に居ないことも多々ある。またすぐに発ってしまうのかと眉尻を下げる蒼に弥生は微笑んだ。
「ああ、今のところ武衛を発つ予定はない。もう少しすればここでゆっくりできる予定だからな、またここにも町にも頻繁に顔を出そうと思っている」
弥生がここに留まるということは、優や紫呉も留まるということだ。その事実に蒼や湊は嬉しそうな笑みを見せた。きっと町の方も弥生が姿を現せば、また活気が戻ってくるだろう。
「周、色々持ってきたから久しぶりに夕食を共にしても良いか? 私も手伝おう」
庵の台所を握っていると言っても過言ではない周に弥生が紫呉の持つ大きな風呂敷を指さして言う。その言葉にキョロキョロと忙しなく辺りを見渡していた周は慌てて弥生に視線を戻し頷いた。
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