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第506話

「食材は大丈夫。しばらくは問題ないはずだから」 「周~。これも使って良いよ~。その為に持ってきたからね」  米を筆頭に、この庵にはそれなりの食材が備蓄されている。贅沢をして豪勢な食事にしなければ数日はもつだろう。そう脳内で計算している周に、蒼は背負ってきた籠に入っている野菜たちを差し出した。途端に周の瞳が嬉しそうに緩む。 「ありがとう。これで尚更問題ない。だから、雪也が行く必要もないよ」  もしも食材が心許なければ雪也が一人で買い出しに行こうと考えていたことは、周にはお見通しだったようだ。優しい口調で釘を刺した周に、雪也は苦笑する他なかった。 「とりあえず、チャチャッと飯の支度して食おうぜ。腹も減ったし、何があったかも聞きたいしよ」  慣れた手つきでタスキをかけながら由弦が周に近づく。おそらくすべてを知るわけではないだろうが、この中で一番現状をわかっているのは雪也だ。由弦たちは勿論、蒼や湊も話を聞きたがっている。確かに、何も知らず不安を抱き続けるよりは、それが残酷なものであったとしても現状を理解している方が良いのかもしれない。そう判断した雪也は無言でひとつ頷くと、小さく息をついて微笑み、自らも夕食の支度を手伝うためにタスキを手に取った。

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