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第525話

 世の中は随分と不穏な空気に包まれている。何かが起こる度に弥生達の安否を心配する生活は徐々に精神を蝕んでいくが、それは彼らもわかっているのだろう。変装をしつつ頻繁に庵を訪ねてきてくれた。  親代わりである彼らの訪れに雪也達はとても喜んでいた。もちろん、由弦も弥生たちに会えるのは嬉しい。だが最近は紫呉が何気ない風を装って庭の方へ誘われて、そこで二人――正確にはサクラも一緒であるが――静かに過ごす時間が由弦の中で何よりも楽しい時間になっていた。 「なんか、来る度に薬草の種類が増えてってねぇか?」  由弦の仕事である庭の手入れを紫呉も手伝い、しゃがみ込んで雑草を毟り取りながら紫呉は辺りを見渡した。確かに、雪也がこの庵に移り住んだ当初より、随分と緑が広がったものだ。 「雪也が買ってくるのもあるし、たまに優さんが新しいの持ってきたりもするからな。でも流石に場所の空きもないし、もう増えないと思うけど」  薬草はあればあるほど雪也としては嬉しいだろうが、庭にも限度というものがある。今の状態でも雪也の仕事に支障はないのだから、もう増やすことも無いだろうと由弦はしぶとく根付いている雑草を勢いよく引き抜いた。

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