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第660話

「なら、月路は少し離れて弥生を護衛しろ。もう俺にも、たぶん弥生や優であっても奴らがどう動くかなんてわからねぇ。俺も最善を尽くすが、お前も弥生の身を守れ。ひと纏まりにならなければ、まだ望みはある」  ここまで来て、こんなにも虚しい現実になって、その上弥生まで失ってはいけない。 「雪也たちを想うなら、なおさら弥生を無事に武衛までたどり着かせるぞ。犬死になどさせるなッ」  今は嘆いている場合ではない。紫呉は己にも言い聞かせるように月路へ命じた。  ここまで必死になってきた意味を見失うな。何も成し遂げられず全滅してしまえば、雪也達は本当に犬死になってしまう。  希望を。未来を。あの子達にあげたかったすべてを、この国に住まう人々に与えるために。嘆き悲しむのは、すべてが終わってからだ。 「行け。身をひそめ、弥生を守れ」  感情を押し殺したその声に月路は膝をつく。 「はいッ。必ず!」  今度は絶対に、護ってみせる。  誓って、月路は素早く身を隠すように闇へ紛れた。彼がいた場所を見つめながら、紫呉は静かに深く呼吸をする。槍を扱うその拳は、強く、強く握り込まれ、小さく震えていた。

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