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第661話

「こちらは固まっても三人。分散させるなら二人かな。流石に弥生を一人で歩かせるわけにはいかないから僕か紫呉が側につくけど、それでも団体と言うほどじゃない。街道を歩いて、その先で馬を調達して森を走るのが最善かな」  床に地図を広げながら言う優に弥生は納得して茶を飲むが、紫呉は眉間に皺を寄せたまま難しい顔をしていた。常ならば頭を使うのは優と弥生の仕事だと言って紫呉はすぐに頷くというのに、なんとも珍しいことだ。どうしたのだろうかと視線を向けた弥生に気づき、紫呉は地図を睨みつけたまま口を開く。 「……近頃、敵の動きは予想しづらくなっている。奴らがなりふり構わなくなっているなら、お前を殺すために街道を歩く一般人を人質にとるかもしれねぇぞ。その時、お前は俺に戦う命令を下せるのか? 命令を下すどころか、戦おうとする俺を止めるお前すら、容易に想像できるぞ」  森の中を行くのは身を隠しやすいが、そのぶん見つかった際には攻撃を仕掛けられやすい。それゆえに人混みに紛れた方が良いというのが定石であるが、弥生達が気にかけているというだけで何の力も持たない雪也達が襲撃された以上、彼らは必要とあらばその辺にいる一般市民を人質に取る可能性も大きくなった。もしもそうなってしまえば、従っても地獄、見捨てても地獄となる。

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