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第674話
走りながら、紫呉は手を伸ばして弥生の髪をクシャリと撫でる。次に優の髪を同じように撫でた。
力だけを見るならば、優の策が最善だ。だが紫呉は知っている。弥生が真に力を発揮できるのは紫呉の側ではない。優がそこにいるからだ。ならば、多少の危険を伴ったとしても弥生から優を取り上げてはならない。それがひいては勝利の道となる。
そんなものはただの詭弁だ、ただ自己満足のためだろうと言いたい奴には言わせておけばよい。すべては結果が物語る。
「紫呉」
名を呼ぶ弥生に紫呉は不敵な笑みを浮かべる。なにもあまりの現状に狂ったわけではない。紫呉には見えているのだ。
「行け、弥生。わけのわからねぇ争いを止めるのがお前にしかできない役目なら、こいつらをなぎ倒してお前を先に行かせるのは俺にしかできない役目だ」
そして弥生を弥生たらしめることができるのは、優にしかできない。
「……必ず私の元へ戻れ。武衛で会おう」
約束してほしい。そんな弥生の視線に苦笑して、紫呉は槍を握った。
「ああ、必ずお前の元に帰るさ」
チラと上に視線を向ければ、それが合図とばかりに人影が馬に跨る。弥生と優が音もなく紫呉から離れたのを見て、馬は目深に被った布で顔を隠しながら駆けだした。
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