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第701話

 遠くで空気が揺れた気配がする。誰かの叫び声、そして刃のぶつかり合う音。振り向き、紫呉の安否を確認したい衝動に駆られるが、弥生は唇を噛んで前を向いた。  振り向けば戻ってしまいそうになる。躊躇えば足がもつれる。泣けば呼吸が乱れる。今の弥生には、どれもが許されないことだ。  隙を作るな。前を見ろ。気配を消し、躊躇わず進め。それが紫呉に対して弥生ができる、たったひとつのことだ。 (必ず帰ってこい。必ずだッ)  胸の内で紫呉に叫び、弥生は走り続ける。その姿を優がチラと見つめていた。

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