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第721話

〝幼子は、何の罪があって死なねばならぬのだろうか〟  なんの罪があって。  それは。  それは――、 「ぃ。おい!」  グルグルと思考の渦に落ちかけていた浩二郎を隣にいた男の小さくも鋭い声が引き戻す。ハッとして目を見開いた浩二郎に、男は咎めるような視線を向けた。 「ここまできて迷うな。迷ったら何も成せないんだぞ」  そんなことになったら、はたして自分達は何のためにここまで走ってきたというのだろうか。多くの命を奪ってきた。今もまた、眼下にいる将軍や近臣らを弑し、彼らの屋敷を焼き尽くそうとしている。もしここで迷えば、それらすべてが何の意味もないモノになってしまう。ただ奪い、ただ燃やし尽くしただけ。  そんなこと、あってはならない。 「すまない、そうだな」  脳にこびりついて離れない影を、声を、感触を無理矢理に振り払い、浩二郎は刀を握りしめた。

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