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第733話
「そう言ってくださることは、ありがたく。その言葉だけで私や父、優や紫呉が戦ったすべてに意味があったのだと思えますから。紫呉を失ったことは、嘘偽りなく申せば悲しい以外にありません。ずっと傍らに居てくれた彼がいないのは、どう耐えれば良いかわからない。彼を愛した子になんと伝えれば良いのかも、今は思い浮かびません。それでも、こんな世の中で、私は近臣で、紫呉は武人でした。自分たちでその道を選んだのです。その時から、置いていかれる覚悟も、置いていく覚悟もしていました。意味のある死だとは、言いたくありません。必要な犠牲だったとも。ですが、無意味でしかない死であったなどとも思いたくありません。彼は命をかけて未来を繋いでくれました」
もしかしたら、いつかはこの時がくるかもしれない。そう覚悟しなければ刃を振るうことなど出来はしない。まさかこれほどの動乱が訪れるなどとは思ってもいなかったが、それでも武器を持って戦うのならば、自分だけは何があっても大丈夫などと楽観視することはできなかった。
すべては自分達が選んだこと。帝に賭けると決めたのも、戦うと決めたのも。
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