741 / 981

第737話

「忠義など金にも酒にもならん、つまらんモノよ。そんなものに必死になり、命を懸けるなど愚か以外、何者でもない。なぁ、そう思うじゃろ? 結局お綺麗なことを言うばかりでは滅びるだけよ。例えそれが誰であろうと蹴落とし、見捨て、世の中の流れを掴んでこそ富と名声を得られる」  侍る女の腰から尻を撫でまわし酒を呷る松中のゲラゲラとした笑い声を聞きながら、部屋の外にいた女の一人が静かに懐に手を差し入れた。カサリと乾いた音がする。  紅のひかれた口元に艶やかな笑みを浮かべ、室内に足を踏み入れた。 「旦那様、新しいお酒をお持ちいたしましたわ。まだまだお飲みになるでしょう?」  他の女たちと同様、身体の線が見える薄衣を纏って婀娜に微笑む彼女に、松中は機嫌よく笑い手招いた。 「勿論だ。まだまだ酔うには早い」  既に顔を真っ赤にしている姿は酔っ払いのそれでしかないが、女はニコニコと微笑むばかりで何も言わない。松中に抱かれるまま身体を寄せ、しな垂れかかるようにして吐息をかけながら酒をなみなみと注いだ。

ともだちにシェアしよう!