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第747話

「箕伏も峰藤領と同じく援助か、あるいは後ろ盾を申し出ましたが丁重に断られてしまいました。蟄居の間は忠実にもご当主と弥生殿は一切顔を合わせず、会話もされておらぬとか。蟄居が解けた後、親子で会話されてお考えが変わるかもしれないと一縷の望みを賭けてもう一度伺い、申し出をしようと領主と話していたところです」  だが、きっと結果は変わらないだろうとその場の誰もが理解していた。理解しているが、同時にすんなりと納得して諦めることもできない。杜環は茶器を手に、小さく息をついた。 「実は先日、妙な話を聞いたのです。どうやら使用人の一人が幾度となく医者を呼び、薬屋に通っていると。春風殿のお屋敷に勤めていた大半の者は暇を出されたと聞いていますが、その中に秋森殿の名は無かったはず。なのになぜ、春風家の者が医者はともかく、薬屋に通っているのか。春風殿の家風からも、秋森殿の性格からも、仮に使用人が病を得たとて秋森殿の薬を服用させるでしょう。秋森殿の腕は市井の薬屋に勝るものですから。ご当主や弥生殿に何かあったとすれば、それこそ秋森殿が動くはず。なのに何故……」  考えれば考えるほど嫌な予感が膨れ上がる。それは他の者も同じだったのだろう、皆が顔を強張らせた。まさか、と誰かが呟く。
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