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第758話

(できれば、弥生には何も知られたくないんだけどね)  でも弥生は勘が鋭いから、時間が長ければ長いほど気づく可能性は高くなるだろう。本当はもっと、一秒でも長く弥生の側にいたいと願うのに、弥生に気づかれたくないから長くないことを願わなければならない。なんて皮肉なのだろう。 「優、入るぞ」  思考の海に漂っていれば、突然弥生の声が聞こえてハッとする。どうやら消されてもいない気配に気づくことさえできなかったらしい。 「具合はどうだ? 少しは薬が効いていると良いんだが」  そう言って静かに近づいてきた弥生は優の側に膝をつくと、そっと額に触れた。 「熱は無さそうだな」  弥生が呼んだ医師の診察は受けた。もっとも、そんな診察などなくとも、優はある程度自分の身体がどうなっているのかを把握していた。だが優はそれらの何一つとして弥生に話すことはなく、それどころか医師に口止めまでした。おかげで弥生は質の悪い風邪をひいてしまったと報告され、今なおそれを信じている。

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