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第759話
「大丈夫だよ。それよりどうしたの?」
以前であれば自分の足で歩き、あるいは使用人たちの話で今なにが起こっているかを容易く把握することができた。しかし今の優には長く歩き回ることは難しく、使用人も片手で数えられる程度に減ってしまったため皆が忙しく動き回っている。こんなに何もわからないものかと驚いたものだが、それにも早々に慣れた。弥生の先回りをしてあげられないことだけが無念だが、仕方のないことと諦めて素直に弥生に問いかける。一言で優を取り巻く変化に気づいたのだろう弥生はいつも通りの笑みを見せた。
「帝の御命で近臣の蟄居が解かれた。屋敷も売り払う予定だからな、父上にお会いしてから一度庵の方へ行こうと思っている。……紫呉のことも、伝えなければならないからな」
特に由弦には、包み隠さず伝えるべきだろう。いつ蟄居が解かれるかわからないからと紫呉の体は既に炎に包まれ、遺骨だけが弥生の元にある。最後に一目すら会わせてあげることができなかったが、それでも、せめて遺骨にくらいは会わせてあげたい。望むのならば由弦に遺骨を預けても良いとさえ弥生は思っていた。その方が紫呉も喜ぶだろう。
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