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第778話

「違う……、我々は……」 「違うと言うのならば答えろ。なぜ雪也を、周を、由弦を、蒼を殺したッ」  紫呉のことは答えられずとも、雪也達のことは答えられるはず。いま弥生の目の前で拳を握っているその手で、あの子達を切ったのだから。 「違う、弥生殿、違うんだッ! 松中殿が弥生殿を止めるにはこの方法しかないと! だからッ――」  尊皇を叶えるには、衛府を滅ぼし国を安寧に導くためには、弥生を止めなければならなかった。そして弥生を止める方法のひとつが雪也達だったのだ。春風当主を狙おうにも、彼には手練れの護衛が常についていて隙がなく、また使用人の数は少ないというのに全員がそれなりの訓練を受けた者となれば忍び込むのも容易ではなかった。仲間の命を守り、弥生の足を止める。その唯一の方法が雪也達の殺害だった。

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