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第780話

「だが、実際に私を狙ってきたのはお前たち尊皇派だ。私が無事に帰れば主上にすべてが返される。それはお前たちが望んだことであり、私が華都から帰ることによってお前たちは自らが戦わずして大願を成就させることができる。なのになぜ、お前たちはただここで生きていただけの雪也達を殺してまで私を止めたかったのだろうか」  弥生が無事に帰ることで困るのは衛府であり近臣であって彼らではない。そして弥生が何のために華都へ向かったのか知らなかった、衛府の存続を願ってだと思っていたという言い訳も彼らはできなかった。それほどまでに弥生の考えは一貫していて、知れ渡っていたから。 「最初は、崇高な志を持っていたのだろう。否、それは今も変わっていないとお前たちは信じている。だが、知らず知らずのうちにお前たちは光明殿の言葉に惑わされていったんだ。まぁ、光明殿もまた、惑わされたのかもしれないが」  じわじわと、まるで毒がゆっくりと体内を犯していくように、その思考は都合の良い方へ流れるよう仕向けられていたのだろう。  より過激に、より残酷にと。

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