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第783話

「たとえ国を未来につなげるためであったとしても、否、それがどれほど崇高で尊い理由であったとしても、多くの人々から家族を奪い、家を奪い、明日を奪う免罪符にはならない。だから武器を持ち、人を殺す戦を認めてはならないんだ。今、お前たちは私の怒りに対して違う違うと叫び否定している。それはお前たちにとって耐えられるものではないからだ。だが目を逸らすな。私が衛府にたどり着かず帝の勅書を届けることができなければ、お前たちの望み通りに戦が始まって数えきれないほどの人々が死んでいただろう。そして今の私と同じ怒りを、悲しみを、無念を、その家族がお前たちにぶつける。なぜなら死んでいく者たちは誰かにとっての大切な人だからだ。当たり前の明日を、平穏を願っていた人たちだからだ」  その願いに、違いはあるのだろうか。どちらかが尊くて、どちらかが打ち捨てられて良いものであったのだろうか。

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