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第788話

「わかっている。わかってるいよ、サクラ」  手を伸ばし、その小さな身体を抱き上げる。彼らにはなれないが、サクラの寂しさが少しでも無くなれば良いと、弥生は由弦や紫呉の手を思い出しながら小さな頭を撫でた。 「刀や大砲は人の命を奪う。大火はすべてを焼き尽くす。戦など、生み出せるものは人々の悲鳴と慟哭くらいのものだ。そこには何も残らない。だが、その事実をすべてが終わり何もかもを失って初めて気づくのが人の愚かさなのかもしれないな」  サクラを抱きしめ、その小さな頭に頬を寄せる。守られ、残った命は、なんと温かいのだろうか。 「やよい、どの……、我々は……」  突きつけられた事実は酷く重くて、浩二郎はガタガタと震える手を見開いた目で見つめていた。その額には大粒の汗が浮かんでいて、唇は何かを言おうとするのに、結局何一つとして声にならない。  彼らの胸の内に広がるのは、いったい何であろうか。  先程弥生に訴えたように、仕方が無かったのだという叫びか。  それとも後悔か。  懺悔か。

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