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第789話
「われわれは、どうしたら……」
呟いて、途端に吐きそうになる。浩二郎は慌てて口元を手で覆った。
失われた命は蘇らない。時間を巻き戻すこともできない。あの優しい手も、口数少なかった子供も、穏やかで少し騒がしい庵も、後悔したって何も帰ってはこない。
信じたモノが、そうではなかったのかもしれない。大儀は奪わずとも成せたのだという証明が今の世だ。戦う意義が無かったのだとしたら、この手は何のために汚されたのか。
もう、何もわからなかった。
ザリッ、と土を踏みしめる音がする。視線を向ければ、弥生がサクラをしっかりと抱いたまま立ち上がっていた。そっと庵を振り返るその横顔は悲しげで、何かを思い出しているようにも見える。ゆっくりと瞼を閉じ、弥生は浩二郎らに視線を向けることも無く口を開いた。
「武器を捨てろ。刀も銃も、二度と持つな。お前たちが大切だと思った者と同様に、この国の人々を愛し、守り抜け。痛みと残酷さを知るからこそ、できることもあるだろう」
過去は変えられずとも、未来はいくらでも変えられる。
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