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第792話
雪也に薬学を教えたのは優だ。自然と部屋に染みついた薬の匂いは他者からすれば薬臭いのかもしれないが、ずっと庵で生活していたサクラにすれば落ち着くものなのだろう。
じわりと、何かが胸の内で蠢く。だが弥生はそれを見ないフリして、口元に笑みを浮かべた。
「少し長居をしてしまったが、調子はどうだ?」
熱はないだろうかと額に触れれば、優はくすぐったそうに笑った。
「長居することなんて予想済みだよ。むしろ、少し早かったくらいだ。僕は何も問題ないから、気にしないで。きっと、ちょっと疲れちゃっただけだよ。まったく、駄目だね。僕ももう少し鍛えておけば良かった」
運動は苦手なんだよね、と笑う優に、弥生も笑みを浮かべる。
「そうか」
「そうだよ。それより、庵の方はどうだった? 皆、元気にしていた?」
優の問いかけに、弥生は頭の中で様々な考えを巡らせた。
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