801 / 981

第796話

「……だいじょ、ぶ」  激しく胸を喘がせながら、それでも優は安心させるように微笑む。その笑みは優しくて、儚げだった。 「ッ……、はぁ……。ごめんね、もう、大丈夫」  なんとか呼吸を落ち着けた優を支え、水をひと口含ませる。ホッと息をついた優にサクラも安心したのか、ソワソワとしていた身体を優の足に近づけ、お尻をくっつけるようにして寝転がった。 「サクラも、ごめんね。騒がしくしてしまった」  柔らかな声が聞こえたのだろう、サクラの耳がまるで気にするなと言わんばかりにピクピクと動く。なんとも器用なものだと眺め、弥生はゆっくりと優の身体を横たえた。 「優、やはりもう一度医者を呼ぼう。昼に薬を飲んだというのに、少しも咳がおさまらないなんて」  これでは休むに休めないと弥生は言うが、当の優は笑みさえも浮かべてゆっくりと首を横に振った。

ともだちにシェアしよう!