804 / 981
第799話
「サクラも、ずっと待っているんだね」
きっと由弦たちが迎えに来てくれる。その時をずっと、ずっと待っている。
「ごめんね、サクラ……」
小さくて、柔らかなその頭を幾度も撫でる。ジッと見つめてくるつぶらな瞳は、優のすべてを見透かしているかのようだった。
「弥生のこと、お願いして、良いかな? 弥生は、寂しがり屋だから、側に、いてあげてほしいんだ」
誰よりも凛と立ち、独りで何でもできて、生きていけるように見えるけど、本当は誰よりも寂しがり屋であることを優は知っている。温もりを求め、そして手放すことのできない人だと。
「ぼくも、がんばる、から……。どれだけ、ねむっても、さいごまで、がんばるから」
サクラを撫でる腕が重い。瞼も閉じてしまいそうだ。遠のく意識の中、優はサクラを見続けた。
「おねが、い……サクラ……、そばに……」
どうか――。
ゆっくりと閉じられる瞼に、サクラはまるで頷くように額を寄せた。
ともだちにシェアしよう!

