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第799話

「サクラも、ずっと待っているんだね」  きっと由弦たちが迎えに来てくれる。その時をずっと、ずっと待っている。 「ごめんね、サクラ……」  小さくて、柔らかなその頭を幾度も撫でる。ジッと見つめてくるつぶらな瞳は、優のすべてを見透かしているかのようだった。 「弥生のこと、お願いして、良いかな? 弥生は、寂しがり屋だから、側に、いてあげてほしいんだ」  誰よりも凛と立ち、独りで何でもできて、生きていけるように見えるけど、本当は誰よりも寂しがり屋であることを優は知っている。温もりを求め、そして手放すことのできない人だと。 「ぼくも、がんばる、から……。どれだけ、ねむっても、さいごまで、がんばるから」  サクラを撫でる腕が重い。瞼も閉じてしまいそうだ。遠のく意識の中、優はサクラを見続けた。 「おねが、い……サクラ……、そばに……」  どうか――。  ゆっくりと閉じられる瞼に、サクラはまるで頷くように額を寄せた。

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