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第803話

「それは美味しそうだね」  少しだけいただこうか。そう答えれば、途端に弥生の瞳が輝いた。ふふ、嬉しそうだ、なんて思いながら部屋を出る弥生の背中を見つめる。ジッと、問いかけるように優を見つめ、そっと頭を擦り付けてきたサクラをポンポンと宥めるように撫でた。 「ありがとう、サクラ」  一方的なお願いだったのに、ちゃんと守ってくれて。 「サクラ、また会えるよ」  健気なほど真っ直ぐに向けられるつぶらな瞳に、優は優しく微笑んだ。その感触を刻み付けるように小さな頭を撫でる。なんて柔らかくて、優しくて、温かい。 「持ってきたぞ。なんだ、私がいない隙に浮気か?」  手に器を持って帰ってきた弥生は、ピッタリとくっついて離れない優とサクラの姿に軽口を叩く。ニヤリと意地の悪い笑みを浮かべた弥生に、優はヒョイと肩を竦めた。

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