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第807話

「国にしても、そうだよ。弥生は多くを失ってしまったって、そう思うかもしれないけれど。でも、あれだけ時代が動き、人がそれぞれの想いで動けば、弥生ひとりですべてを救うなんて、きっと不可能だ。だって、人の思いはバラバラだったから。けれど、そんな中でも、救えた方だと、僕は思う。少なくとも、武衛が戦の地になることは避けられた。それだけで、多くの人が救われたんだ」  確かに失った命も多い。だがそれらが弥生の動きが何か一つでも違っていれば救えた命かと問われれば、違うようにも思う。 「弥生が動く意味が、あったのだと思う。弥生でなければならなかったことが、沢山あったと。そしてそんな君の側にずっといられたことを、僕は誇りに思うよ。だからね、弥生。僕は声の限りに叫びたいんだ。弥生は何一つ、間違ってなんかいないんだって。君の勇気が、想いが、人々に今を届けたんだって」  その声を、誰よりも弥生の心に届けたい。もう届けられるのは優しかいないのだ。

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