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第9話

 もう時間もないと手早く着替えて浴室を出る。その頃には終わっていた洗濯物を干し、優の用意してくれた朝食を食べ、昨夜のうちに用意していた荷物を手にした。 「じゃ、俺は行ってくる。また後で」  今日はみっちり講義が詰まっている日だから、きっと帰りは優たちと大差はない。それを知っている優も軽く手をあげて「いってらっしゃい、また後で」と言った。  玄関を開け、一歩外へ出る。その瞬間、隣の扉もガチャリと開いた。 「あ、紫呉先輩だ! おはよう!」  紫呉を見た瞬間、パッと顔を輝かせて笑うのは後輩の由弦だ。朝日に彼の明るい地毛が照らされてキラキラと輝いている。昔、彼の事を太陽のようだと言い始めたのは誰だったか。その言葉の通り、彼は生まれ変わってもなお、太陽のように輝いている。  そう、この世界で由弦と出会ったのは大学生になってからだが、紫呉はずっとずっと前から彼のことを知っている。知っているだけじゃない。彼はあの時代で、紫呉の恋人だったのだから。

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