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第10話
「おはよう、由弦。珍しいな、朝から講義か?」
いつもできるだけ昼に近い時間から登校できるようにしているのにと言えば、由弦はあー、だの、うー、だの言いながら視線を彷徨わせ、そして何かを誤魔化すようにヘラッとぎこちない笑みを浮かべた。
「ちょっと、昨日提出だったプリントを忘れちゃってさ。もう〝明日の朝一までしか待たん!〟って怒られちゃったんだよなぁ」
「そんな怒られるって、お前どんだけ忘れてんだよ」
卒業論文などの特別なものは別だが、普段の提出物を当日忘れたからと言って怒髪天を衝く勢いで怒られることなどあまりない。人間は時に忘れる生き物だからだ。
まさか毎回毎回忘れているのか? と視線を向ければ、由弦は違う違うと必死に両手と首を振って否定した。
「違うって! 普段はそんなに忘れねぇよ。ただちょっと、ほんのちょっとタイミングが悪かっただけだって。……今回は雪也が起きてる時に帰れなかったから、教えてもらえなかっただけだし」
ボソボソと呟かれた最後の言葉に紫呉は噴き出しそうになるのを必死に堪えた。
なるほど、先日あった小テストであまり良い点が取れなかったのだろう。その上に提出物を忘れたということか。確かにタイミングが非常に悪い。
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