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第12話

「今日は俺が夕飯の当番だから、帰りにスーパー寄らねぇとだけど。なぁ紫呉先輩、夕飯なにが良いと思う? ちなみに昨日は蒼だったからめっちゃ辛かった」  それはただの感想であって昨夜の夕飯メニューではない、とは突っ込まない。異常に辛いモノを好む蒼が作ったのだ。きっとどんなメニューであったとしても〝辛い〟以外は何も残らなかったのだろう。 「昨日が辛かったなら、今日はアッサリしたもんの方が良いんじゃねぇか? 豚汁とか、お前らんところは人数が多いから、多めに作っときゃメインがどうであれ腹は膨れるだろ」  そう、紫呉たちは三人で共同生活をしているが、由弦たちは五人だ。何の因果か、あの時代に弥生が貸していた庵に住んでいた者と、よく訪れていた者が集まってルームシェアをしている。  穏やかで賢く、美人であるがゆえに変質者に遭遇しやすい雪也に、雪也の後を雛鳥のごとくくっついて回る、無口だが優しい周。紫呉と同じように勉強は苦手だと公言してはばからず、愛犬サクラと全力で遊ぶ由弦に、おっとりとした性格で常にニコニコと微笑みを浮かべ、作り出す料理はすべて火を吹きそうな激辛である蒼、そして賑やかな事が大好きで、よく由弦と全力のおふざけをしている、ルームシェアの提案者でもある湊。

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