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第13話

 彼らを見ていると、住んでいる家も着ている服も、年齢さえ違うというのに、どうしてもあの時代の日々を思い出す。彼らはあの時代でも同じように集まり、穏やかに、時に賑やかしく過ごしていた。その中に紫呉が交ざったことも数えきれないほどにある。  クシャリと、気づけば隣を歩く頭を撫でていた。紫呉、紫呉と懐いていたあの頃と変わらない、柔らかく愛おしい髪。 「わッ! なんだよ急に! メイン考えてたからビックリしただろ!」  よほど真剣に考えていたのだろう、由弦は急なそれにビクリと大げさなほどに肩を跳ね上げ、勢いよく紫呉を見上げる。けれど口で言うほどに嫌がっていない――どころか、もっとしてほしいくらいには喜んでいるのだろう。そのキラキラと輝く瞳を見ればすぐにわかる。本当に、嘘のつけない子だ。 「悪い悪い。ちょっと寝癖がついてたからな」  なんて、頭を撫でるための適当な嘘をつけば、由弦は先程の嬉しそうな顔を一変させてワタワタと髪に手を伸ばした。 「えッ!? まだ跳ねてた!? 朝めちゃくちゃ頑張って直したのに」  どうやら偶然にも今日は素晴らしい爆発具合だったらしい。咄嗟についた嘘なだけに申し訳ないことをしたという罪悪感も出てきたが、同時にその素晴らしい爆発を見たかったなという気持ちも湧いてきた。

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