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第14話
「なぁ、直った? 鏡持ってないからわかんないんだけど、直った?」
何度も髪を手櫛で整えながら心配そうに言う由弦はいつもより幼くて、あぁ、平和だな、なんて思う。しかしそれをおくびにも出さず、紫呉はポンポンと髪を優しく撫でた。
「大丈夫だって。いつも通り可愛くできてる」
だって本当は頭を撫でるための嘘だったから、とは言わない。
「いやそこは可愛いよりカッコいいでよろしく!」
ピンと人差し指を立てて笑う由弦に、そういうところが可愛いと言われるんだぞとは思うが、これもまた言わない。これ以上言えばお年頃な由弦は拗ねてしまう。紫呉はさじ加減を知る男なのだ。
「カッコいい、カッコいい。それより、メインは魚とかどうだ?」
「今サラッと流した?」
ムスッと顔を顰める由弦であったが、夕食当番であるためメインのおかずは考えなければならない。仕方なく頭に沢山の魚料理を浮かべることにした。
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