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第17話
結局、すべての顛末はこういった授業と、そして弥生と優の話で知ることとなった。
衛府を存続させたくない者達によって帝からの勅書を持った弥生が狙われた。弥生が衛府にたどり着けなければ戦が始まってしまうと、紫呉は敵の足止めをするために残り、そして命を散らした。しかしその甲斐もあって弥生は衛府へとたどり着き、戦をすることなく衛府は長い時代に幕を閉じ、争いは終わった。
だけど、紫呉は〝知って〟いる。守りたい者の為に戦ったというのに、大切な者たちは生きることができなかった。当時近臣の一人だった弥生と関係しているからと、ただそこで日々を営んでいた彼らは殺された。雪也が命を助けた者達に、殺された。
由弦も、蒼も、子供だった周さえ、刃に貫かれた。それに絶望した雪也は毒を飲み、湊は行方不明になった。由弦によって逃がされたサクラだけが生き残り、最後まで弥生の側に居てくれたという。
だが、そんな事実は教科書に書かれることはない。歴史書や文献にさえ、ただのいち市民であった彼らの名はない。その最期も。
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