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第20話

 人の流れに合わせて教室を出る。道々で声をかけられては応えるを繰り返していたら、あっという間に食堂の近くまで来た。中を覗きこめば、まるで知っていたかのように朝別れた由弦が振り返り、紫呉に向かってブンブンと手を振っている。その席には弥生や優、そして〝可愛い後輩〟である雪也と周の姿もあった。 「よ、もしかして待たせたか?」  特に約束をしているわけではないが、昼食を大学で摂る時は食堂で一緒にというのが常となっていた。弥生と優の前には日替わりランチのプレートが、後輩たちの前にはおにぎりやおかずがギッシリと詰められたお重箱があるが、それらに手をつけられた形跡はない。特に講義が長引いたわけでもないが、待たせただろうかと慌てて財布を出す紫呉に、これまた由弦はブンブンと首を横に振った。

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