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第30話

(少なくとも俺はそんなの見てないから知らない)  さっきまで紫呉が雪也のことを好きなのでは? と欠片も思わなかったではないかというツッコミは生憎誰もしてくれない。それゆえに由弦の脳内は止まることなくグルグルグルグルと勝手に回り続けた。 「由弦、固まってないで肉巻き食べるのか食べないのか決めて」  肉巻きを取る寸前で箸を止めながら考え込んでいた由弦は、呆れたような周の声にハッとして、あははは、と誤魔化すような乾いた笑いを零しながら肉巻きを取る。口に含めば空腹を思い出したかのように腹が小さく鳴った。 「腹減ってんだったらちゃんと食べろ。ちゃんと待っててやるから、喉詰まらせるなよ」  まるで親のようなことを言う紫呉にコクコクと頷いて、由弦はとりあえず思考を停止させて食べることに集中した。何より、周の作るものは美味しいのだ。グルグル考えながら食べては味がよくわからなくて勿体ない。

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