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第33話
「よし、由弦はまだお勉強が残ってるからな。俺と一緒に遊んでいよう」
撫でられながら言われた紫呉のそれにサクラはピンと耳を立て、抱き上げている彼を見上げた。そのつぶらな瞳は喜びに溢れていて、なんだか自然と笑みがこぼれる。
周がそっと家の中に入ったのを見て、由弦は紫呉に抱かれたままのサクラに手を伸ばし、その小さな頭をワシャワシャと撫でた。
「じゃ、サクラは紫呉先輩と遊んでてくれな。すぐ帰ってくるから、その後に散歩行くぞ」
撫でる由弦の手に頭を擦りつけていたサクラは、散歩という言葉に再び耳をピンと立てた。その素直な様子が可愛くて、紫呉と二人でケラケラと笑う。そしてそのまま大学に引き返しそうになって、由弦は慌てて家の中に入った。
そうだ、忘れ物をしたということになっているのだから、ちゃんと一度は部屋に戻らないといけない。
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